あるセミナーに参加された方がおっしゃいました。
<p style="padding-left: 30px;"><span style="color: #808080;"><em>ウォーミングアップは「やっとけよー」</em></span>
<span style="color: #808080;"><em> 試合では「なにやってんだ、お前ら」と怒鳴り</em></span>
<span style="color: #808080;"><em> 練習が終われば、片付けてさっさと帰る。
</em></span>
<span style="color: #808080;"><em> まともにストレッチについて教えたこともないのに、
いざ子供たちが故障をおこせば</em></span>
<span style="color: #808080;"><em> 「<strong>お前、ストレッチサボってただろう</strong>」と、
痛めた本人が悪いみたいに、しかりつける。
</em></span><span style="color: #808080;"><em>
…これじゃあ、いかんと思います。</em></span></p>
スポーツにおける故障や怪我は、防ぎたいものです。

とくに子供たちのスポーツでは怪我や故障で活躍の場をフイにしてしまうと、その後の競技人生を大きく左右することもあります。

諸外国のようにクラブチームで一貫した方針のもと競技スポーツを続ける場がまだあまりひらかれていない日本ではクラブ、部活動、チームなどに各々所属してスポーツを続けることになりますが、小学校、中学校、高校と短いスパンで区切られるため、指導に関しても縦の連携が乏しく、一人一人の成長を見越した長い目で育成し一貫した方針の元、選手を育てる環境が整っていない場合が多いといわれています。
長期展望やビジョンが持てないので結果としてその場その場の「成果が全て」ということにもつながりやすいように思います。
試合となるとチームでメイン活躍できる時間は限られ、多くの場合ワンシーズンが活躍のハイライトとなるから、万が一怪我をしてしまうと「またチャンスはあるから」とは思うこともできずどうしても無理をしがちになります。

スポーツにおける怪我(ケガ)は、下記のように二つに区別されます。
<ul>
<li><span style="color: #339966;"><strong>スポーツ外傷(スポーツがいしょう)</strong></span></li>
<li><span style="color: #339966;"><strong>スポーツ障害(スポーツしょうがい)</strong></span></li>
</ul>
<span style="color: #ff0000;"><strong>スポーツ外傷</strong></span>とは、
転倒や接触など突発的で大きな外部からの力により受ける外傷(怪我)で、骨折、脱臼、捻挫、打撲、肉離れなどがあります。スポーツ外傷のうち「肉離れ」については常日頃からストレッチングしている習慣が予防に有効と言われていますが、偶発的な出来事によるので、スポーツをするからには完全に防ぐことが難しいと考えられています。

スポーツ外傷は防ぐのは難しいものも多いのですが、故障の中には予防できるものもあります。

<strong><span style="color: #ff0000;">スポーツ障害</span></strong>は、<span style="color: #339966;">ストレッチングの習慣で発生を抑えることができる</span>と言われています。
スポーツ障害はスポーツをする際に繰り返しストレスが加わって起こります。疲労骨折、アキレス腱炎、テニス肘、ジャンプ膝、オスグッド・シュラッター病、シンスプリントなどがあります。
とくに小学校高学年から中学校にかけて身長の伸びるピーク前後では、筋肉や軟部組織が骨の成長に追いつけずアンバランスとなり、急に体が固くなったようにみえる時期があります。
この時期は、激しい運動や負荷の高い筋トレを行うと骨と筋腱付着部に大きなストレスがかかることになり、故障を起こしやすくなりますので、ジュニアスポーツの現場で指導を行う際には注意を払いたいものです。

オスグッド病はひざ下に痛みを感じる障害で、背が急に伸び大腿の骨が伸びる時期によくみられます。
骨は縦に伸びますが、たとえば大腿骨が成長して長くなる速度に比べ、大腿四頭筋の長さが変わるかというと、おいつきません。そのため前腿の筋肉が骨に対して短い状況となり、一見して体が固くなったようにみえます。この時期にジャンプやダッシュなどを繰り返すと、膝を曲げる際に大腿四頭筋が骨にくっついている部分、ひざ下の脛骨粗面の付着部が引っ張られ、痛みを伴うようになり、筋肉が骨に付いている付着部分で引き剥がされるようにけん引ストレスがかかるため、徐々にひざ下がコブのように盛り上がってくるようになり、ひどい場合ははく離骨折を起こしてしまいます。

スポーツ障害は治癒まで長期間を要することもありますし、一旦症状が出てしまうと、スポーツをしながら直すことは難しいので治療の期間はスポーツ活動も制限せざるを得ないことが多々あります。

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<h2><span style="color: #ff0000;">×</span>「様子をみながら、痛みのない範囲でスポーツをすればいいじゃない」</h2>
「様子を見ながら」はNG。
スポーツ中に加減などまずできないと考えてください。
アツなれば「ついうっかり」やりすぎることは防げませんし、痛めたところを更に酷くしたら元も子もありません。
急性症状があるときは、安静が一番です。
<h4><span style="color: #339966;"><strong>ケガをしたら RICE(ライス)で応急処置</strong></span></h4>
スポーツ外傷を受けた直後は速やかにRICE処置を行うことが重要です。
Rest(安静) Ice(冷却) Compression(圧迫) Elevation(拳上)

※あくまで応急処置ですのでRICE処置のあとは、必ず整形外科医かスポーツ医を受診し治療を受けましょう。
<h4><span style="color: #339966;"><strong>怪我をしたとき、どれくらい安静にしていたらよいのかの目安</strong></span></h4>
RICE処置のうちアイシング(Ice:冷却)に関して、以前はその日、あるいは翌日も冷やすようにと言われていましたが、最近では7日間くらい有効だと言われています。
重症のときはケガの直後72時間しっかり冷やすことが非常に重要で、この期間をきちんと処置できたかどうかがあとあとの復帰に響きます。軽い損傷の場合は、腫れ、出血(外部、内部)が少ないので24時間ほどで十分といわれています。
<h4><span style="color: #339966;"><strong>競技復帰までの道のり</strong></span></h4>
ケガをすると、しばらく運動ができなくなります。

例えば、<strong>肉離れ</strong>の場合、症状や重症度にもよりますが競技復帰までに要する治療期間の目安は、軽度の肉離れでも2週間程度、重度の場合は3ヶ月以上といわれています。

誰しも早く競技へ復帰したい!と思うでしょうが、治りきっていない状態で無理に競技復帰を果たしたとしても、残念ながら傷ついた筋肉ではベストパフォーマンスは望めません。肉離れでは部分的に筋肉が断裂しているため、治りかけのときに動くと断裂部位が広がりさらに筋肉を痛めてしまう場合があります。
急性期をこえ回復期に入ったらリハビリをはじめる時期などもお医者様と連携しながら適切に取り組む必要があります。

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<h2><strong><span style="color: #ff0000;">×</span>「痛みがあるから、ストレッチで治そう」自己流診断は危ない。</strong></h2>
<strong>1)ケガの後</strong>
痛みや腫れの見られる急性期はもちろん安静第一です。
少し容体が落ち着いてきても医師から「もう動いてよいです」のリハビリ開始OKの一言が出る前の期間は、患部周辺に関しては自己流のマッサージやストレッチはNGです。
その理由は回復を遅らせたり、もっと悪化させることがあるからです。
損傷部位の組織を修復させるための期間に、外部から力をかけて動かしたりさすったりすれば、損傷部位を広げ新たな内出血を起こしたりさらに悪化させたり回復を遅らせることになるので、患部やその周辺へのストレッチやマッサージは止めましょう。

<strong>2)ケガしたわけではないけれど…</strong>
ぶつかった、転んだ、など何かはっきりきっかけがないときに気になる痛みが続く場合は、念の為お医者様にみてもらいましょう。
スポーツ障害ですでに症状が出ていたとしたら、自己流でストレッチングするのはNGです。
たとえばオスグッド病で、筋肉が固くなって引っ張られてひざ下に痛みが出ているとき、ストレッチングを行うとさらに牽引力をかけることになり、はく離が進み痛めることがありますので、痛みや腫れ、急性症状がある際にはストレッチングは行わないようにしましょう。

(国家免許のない人間には、治療は行えません。※医療行為である治療を行えるのは国家資格免許を持つ人のみになります)

基本的には痛みや腫れなどの急性症状がある時、自己判断はせず、専門の医療機関を受診し、医師に治療をまかせ、安静に回復を待つしかありません。

<strong>3)お医者様に「ストレッチしてもよい」といわれたら
</strong>お医者様のご指導のもと、リハビリやストレッチを行いましょう。
「様子をみながら少しずつ」と言われたときは無理のない範囲で、「どんどんやっていいよ」といわれたときはどんどんやってください^^

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<h2><span style="color: #ff0000;">◎</span>「急がば回れ」
一旦故障をしてしまった場合、まずは治すを優先。</h2>
怪我をしてしまった時点で、できることは一日も早く治することしかありません。
中途半端に復帰すれば、また繰り返し、治療を難しくし長引かせることになります。

選手として中途半端な状態ではベストコンディションとは程遠く、精神的にも肉体的にも悩みを増やすことにしかなりません。

痛みをこらえていたり、「また痛みがぶり返すのでは」と心配しながらでは、競技中も実力を発揮することができません。
<h4><strong><span style="color: #ff0000;">パフォーマンスは、健康な体あって。</span></strong></h4>
健康が一番。
技術はそのうえに積み重ねられるもの。その状態ではじめてパフォーマンスが発揮されるのです。
体ができていない状態で厳しい練習を続けていれば、体は壊れます(壊されます)。
パフォーマンスを追い求めるあまり、健康をおろそかにしては元も子もありません。

ジュニア・スポーツにおいて、指導者の立場にある人がとても重要です。

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<h2><span style="color: #ff0000;">◎</span><strong>指導者の力で、防げるスポーツ障害は防ぐ。</strong></h2>
<span style="color: #ff0000;"><strong>スポーツ障害は、起こしてはダメ!</strong></span>
指導者として「子供の未来を守ること」が一番の基本だと私は考えます。

子供は大きくなります。

現場で子供たちに接していれば「これから背が伸びそうだ」という時期もある程度分かりますし、何より経験豊富な指導者は、子供たちと違って先を見通すことができます。背が伸びる時期におこりやすい障害に対しては、指導者の側が予防の手立てを考えてゆくことが大切でしょう。

故障する前、痛みのない時期から取り組むこと。

成長期は体がどんどん大きくなり、力も強くなります。パフォーマンスが向上する分だけ、土台となる体をしっかり設計してあげましょう。

手足を動かす際の体幹安定性に加え、広い関節可動域(柔軟性)を持つことは、選手として高いパフォーマンスを引き出すはずです。骨が成長してゆく分だけ筋肉も柔らかくしておく必要がありますから、成長する先を見据え効果的にストレッチングをプログラムに組み込んでゆく必要があります。

指導する立場として、高い負荷のかかるメニューや使い過ぎ(オーバーユース)は見直す必要がありますし、故障の前兆をみのがさず、痛みや違和感がある場合はフォームを見直すとともに、効果のあるストレッチングを丁寧に指導できれば、故障なく、選手の高いパフォーマンスを引きだし、可能性を広げることができるでしょう。

多くの場合、一度スポーツ障害を起こせば、プレーヤーとしての<span style="color: #ff0000;"><strong>旬の時期</strong></span>を逃すことに繋がるケースが多い。

スポーツをしなければ、スポーツ障害はおきません。
指導する大人の側が、子供の未来を壊してはいけない、と強く願うのでした。